2007/11/18

すぷらったの是非は。

八薙玉造『鉄球姫エミリー』
第6回スーパーダッシュ小説新人賞大賞受賞作。
前王の長女(非嫡出)で「鉄球姫」とあだなされるほどの武勇を持つエミリーが、家督問題を放置していたところから屋敷を襲われるというストーリー。
すごいのは、負け戦を書いて、これでもかと言うほど負けて、最後に勝つというところ。最近は「オレTUEEEEEEEEEE」を地でいくような小説がちらほらあるなかで、こんな負け戦を書ける作者に感服。ただ、主要人物と思われていた人たちまで死んでしまったのがすごく残念。キャラがきっちり立っていた人たちが舞台から消えていくのはちょっと寂しいし、惜しい。続編も出るようなので、注目したいかな。

あとは、主人公が小生意気なサド女なので、ちょっと感情移入しにくい。同じような主人公の例としては、海原零の『銀盤カレイドスコープ』シリーズがあったけど、あれは主人公の優れた能力・才能と、本当に尊敬すべきものに素直に敬意を表していたところで非常に好感をもてたし共感できた(読者がみな「悪」だと思える存在が設定されていたのもあるけど)。『鉄球姫エミリー』の方だと、主人公・エミリーの精神的な幼さが目立ちすぎて、その生意気な言動が正当なものだったとしても「なんだこのクソガキ」みたいな反応しか出来なかった。ただし、重要なサブキャラたち(後見役の老人や影武者の女性)の死や、自らの敗戦などによって成長した姿が描けるか、が続編での見所、なのかな。

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